韓国の有名シェフが魅せられた「大阪の立ち飲み屋」(翻訳ほぼ全文)


大阪。仁川から飛行機で1時間40分の距離にある日本の関西地方最大の都市。南の繁華街・難波から北の中心・梅田まで、飲み屋が密集しているこの街に、イタリア料理をベースにするシェフ、パク・チャニルがはまった。  

どれほど多くの飲み屋で飲んだのか、本を読むと行間から酒の臭いが漂ってくるようだ。幸いなのは、心は酔っていても、彼の舌と目は酔っていないという事実。店のメニューから酒の種類と酒の出し方、客の雰囲気まで漏らさず記録して本を書き、星の数で評価した。長く旅行書のベストセラーとなった本「大阪は好きで立って飲む」は、パク・チャニルが選び抜いた飲み屋70個と、37個の食堂が紹介されている。

なぜ大阪なのか、どんな大阪のか、会って尋ねた。 

――本には本当に多くの店が登場する。いったい大阪でどれだけたくさんの飲み屋に行ったのか? 

本格的に本を必要と出さなきゃと決心して、作業を始めてからあまり時間はかからなかった。以前から大阪で飲み食いに行って「これは一度やらなきゃ」と冗談で言ったが、出版社の方から本当に「やってみよう」と急かされたケースだ。 紆余曲折があったが、大阪に20回程度行って、うち8回が公式取材だった。行った飲み屋を数ると700〜800店程度になった。その中で200店を選んで、150店に厳選して原稿を渡した。原稿まで書いたうち、編集者が40店をカットした。原稿まで書いたのに没にしたから、頭にきた(笑)。 

 ――なぜ大阪なのか? 

韓国人にとっては大阪は解放だ。そこでは誰も私を知らなくて寂しい。しかし、また外国人だからといって手厚いもてなしをしてくれる。どの国でも政治家たちは互いに批判し合うが、市民たちは親切だ。私がおごってもらったタダ酒、タダ飯はすごく多い。互いの政治体制についてはあげつらって批判しながらも、市民同士は交流できるというのが、この本を出す本当の理由の一つだ。

 「斜めに立って肩を並べないといけない。それはこの店で客が存在を証明する方法だ。このような状態を、日本ではよく「ダークダックス(Dark Ducks)」と言う。はるか昔に活動した男性四重唱グループの名前だが、彼らが歌うとき、テレビの画面に4人が同時に写り込めるよう、斜めに立ってから生まれた言葉だ。(「大阪は喜んで立って飲む」から) 

もう一つの理由は、酒飲みとしての理由だが、飲み代がびっくりするほど安い。韓国の飲み屋では、マッコリ一杯につまみ1つを頼んで出て行くことができない。それは迷惑だ。また、2次会に行くまでがとても長い。それは東京も同じだ。小さな飲み屋が無数にある大阪は、1軒で1杯だけ飲んで、回転し続ける。このような回転を可能にするシステムが、まさに立って飲む「立ち飲み屋」だ。立ち飲み屋は定員がない。10席ほどの狭い店でも、いざとなったら20人が立って飲む。「ダークダックス」と言って、狭いところに肩を入れて重なるように立つ。 

 ――韓国にも立ち飲み屋があるのでは?  

韓国にも立ち飲み屋があった。宗廟の横のスンラギルにはまだ立って飲む店が3、4軒残っている。だけど、今はそこに行きにくい。太極旗の壮年層(注:太極旗を掲げて保守政党の支持を叫ぶ暴力的なデモに参加するような、いかつい年配の男性たち)が占領していて、私たちのような人が行くと排斥する。田舎の市場の裏に行くと、今でも立って酒を飲む文化が残っている。麗水、咸平のようなところに行くと立って食べる。求礼にある東亜食堂に行くと、地元の人々は立って食べてすぐ出て行く。

 ――大阪の人は、なぜそうやって酒を飲むのか? 

 大阪はちょっと息が詰まる都市だ。北の梅田から南の難波まで南北5km。この5kmの道で東西に枝分かれしたあちこちの街に飲み屋があり、それが全てだ。その短い場所に200万の人々が集まって飲む。東京は明治神宮、代々木公園、日比谷公園などの公園が多いが、大阪は河川敷しかない。公園があるといっても遊び場レベルだ。目に見えるのはすべてコンクリートで、すべてが実用優先で回っている。このような雰囲気が、酒を飲ませる。 

 ――本にも出てくるが、大阪の飲み屋といえば思い浮かぶ場面がある。白昼に街中でラフな格好でお茶のように酒を飲む年配男性たち、バックグラウンドミュージックのように流れる阪神タイガースや甲子園の野球中継など。大阪特有の地域色がある。 

歴史的に見ると、関西地区では、京都が権力の中心で、商業都市・大阪はこれを下で支える構造だった。(京都、神戸、大阪など)都市ごとにカラーが異なるが、「関西」とひとくくりにすると、そもそも東日本とは違う国のような感じだ。この地域は、電源も違う。西日本は60Hzで東日本は50Hzを使う。野球も同じだが、関西地方と呼ばれ、関東地方と呼ばれる東京とはライバルの構図だ。 

――大阪市内のお酒を飲む地域について説明してください。

難波地区は、韓国と中国の観光客であふれかえっている。そこで隠れた店を発見することはほとんど不可能だ。それでも難波はナイトライフの中心でとても広い。「ミナミで一杯やろう」と言えば、難波で酒を飲もうという意味だ。本では、私が「裏難波」という言葉を使ったが、難波地区の中でも隠れた場所を探すという意味で、最近できた言葉だ。裏難波エリアに行くとラブホテルがある。ラブホテルがあるということは、ひとまず観光客中心のビジネスエリアではないという意味だと思った。観光客はホテルに行くが、ラブホテルにはいかないから。その他の本で、福島(原発事故が起きた福島とは、他の地域)と天満地区に隠れた飲み屋を見つけた。  

――探してみると本に出ていた店の情報が、ブログや掲示板にあまりなかった。  

だから私はこの本を書きながらも「これでいいのか」と考え続けた。こっそり裏難波、天満、梅田に通う人々もいるはずなのに、その人たちに申し訳ないことになるかもしれない。この地域が知られ、韓国人たちが掘り起こし始めて、ハッシュタグが作られたら大変だ。だから、私の本があまりたくさん売れてはだめだ。(笑) 

参考:韓国のネットユーザーが飲食店を評価するとき「価性比」という言葉を使う。日本では、英語のコストパフォーマンスを縮め「コスパ」と書く。大阪はコスパの都市だ。 

――大阪の飲み屋が安い値段でいられるかは少し疑問だ。日本でも、融資をすべて返済し、自分の店舗で年金をもらう夫婦が安い値段で営業する店が消えているという話を聞いた。そんな店を誰かが買収したり、代を継いでも、先代の価格を維持するのは難しいという分析があった。大阪の飲み屋もそんなケースではないか?  

大阪の飲み屋は、短期間では変化はないようだ。ナイトクラブとは異なり、飲み屋は「独りでに」みんな利益を出す。安い価格を維持できるシステムが構築されている。例えばハイボールに、安いウイスキーを入れるとか、一部は自動化された完成品を使うといった方式がある。  

――大阪でうらやましいことの一つが、住宅地にある飲み屋のクオリティが非常に立派だということだった。 

いくつか理由があるだろうが、おそらく外国だからそう感じたのかもしれない。決定的なのは、完全に競争のためだと思う。大阪で商売はまぐれ当たりがなく、すべての牌がオープンになった競争だ。技術と良い材料を結びつけて商売しても、それなりに生きていける。 韓国も今、ほぼ完全競争市場になっていると思う。しかし、韓国はまだ店ごとに実力差が激しく、消費者が日本人のようにうるさくないというまぐれが存在する。まぐれ当たりがない大阪には意外に老舗が少ない。老舗の半分ぐらいは長くなったという事実で残っている店だ。ものすごい老舗のような店に行くと7年になり、12年になったと言われた。内容と品質を維持できなければなすすべなくつぶれる。大阪の消費者は、徹底した実用主義者だ。 

――本に出てくる店には行ったことのある店もあった。例えば、わずか1カ月前に裏難波にある正宗屋に行ってきたが、評価が思ったより低かった。  

私が評価を少し厳しくした。辛口の評価をしたものの、本に載った店はどれも本当にいい店だ。私の本を読んで大阪で飲む人が、星4つの店から行ってみるなら、それは、大阪をちゃんと楽しめないやり方だ。星2つまたは星のない店から行ってこそ、本当にたくさんの飲み屋を楽しめる。

原文:

0コメント

  • 1000 / 1000